オンライン研修での食事を考える-オンラインお弁当配送サービス

「会場集合型研修ではできなくてもオンライン研修ならできる」ことはいくつもあります。会場集合型を選ぶか、オンライン型を選ぶか、はたまたハイフレックス型を選ぶかは、受講者像やコンテンツによって適切に選びたいものです。

そんな中、オンライン研修で「ここは何とかしたいな」と思っていることがあります。食事です。会場集合型研修であると、終了後の懇親会、終日研修ならばランチタイムというように「食べる」をコミュニケーションのハブに使うケースがあります。みんなで共通のものを食べることでインフォーマルなコミュニケーションが生まれ、学びの連帯感が生じるなどのメリットが想定されます。実際、オンラインランチタイムやオンライン懇親会を設定することはよくあるのですが、その場合の多くは「食べ物は各自準備してください。BYODで。ただしDeviceでないほう……」というような建付けになっています。しかし、各自が準備するとなると、準備が大変だったり、そもそも準備できなくて、「私はパスしちゃおう」となったり、なんだかんだとうやむやになりがちです。

しかし昨今、オンライン懇親会用のお弁当配送サービスも増えてきました。これをオンライン研修のランチに利用するのはいかがでしょうか。

いきなり受講者がいる本番環境で実践するのでは不確定要素が多すぎます。まずはインストラクショナルデザイナーが集うランチミーティングで形成的評価的にトライしてみました。ウェブ上での調査のみでなく、実際に与件を設定して事業者を選定し、契約発注し、ミーティング当日に参加者が弁当を受け取りランチミーティングするところまで実際に行ってみました。

オンラインお弁当配送サービス事業者の選定

オンライン研修向けにサービスを選定する際には、以下のような項目を確認・検討する必要がありそうです。

お金周り

  • 予算
  • 支払方法は、クレジットカードか、請求書も可能か
  • 研修自体がキャンセルになった場合など、全体としてキャンセルする場合の手順・キャンセル料は?

通常、主催者がまとめて全員分の料金を支払います。受講料に含めて徴収することになるかと思います。おいしいランチは研修自体の満足度を上げる要素のひとつと言うほどなので、おいしいランチを準備することは研修デザインとしても妥当ではありますが、あまりに金額的に高額になると「研修にお金を払ったのに……」ということになりかねません。研修内容も鑑みて、高すぎない金額を設定する必要があります。

オンラインお弁当配送サービスは、安いところでは2,000円台からあります。しかしながら「届いて見たときに、うれしいと思える」ような内容のものだと3,000円台からになるのではないかと思われました。5,000円以上準備できるとかなり豪華になりそうです。

ひとつの単価は高額ではないにしろ、取りまとめて支払うので、まあまあの金額になるはずです。支払方法は、クレジットカード決済、後日の請求書による支払など、事業者によって異なります。また、支払タイミングも事業者それぞれなので、前もって確認しておく必要があります。

また、諸事情により、研修自体が取りやめになるなどのことも想定されます。オンラインお弁当配送サービス自体をキャンセルできる日時や手順、キャンセル料も前もって確認しておく必要があります。一般の参加者を募る研修の場合には、研修自体の開講決定日とお弁当配送サービスのキャンセル可能日を調整しておくと安心です。

参加者に対する柔軟性

  • 最低発送個数はいくつか。
    1個から、数個以上で可能か(10個以上などの場合がある)
  • 参加者の希望(飲み物の選択や送付先住所)の取りまとめ方
    幹事とりまとめよりも専用のフォームで個人ができるとよさそう。
  • 合計金額の決定するタイミングは(参加者による申し込みなしなどの場合の対応)

研修では、参加者の状況やニーズに合わせて対応する必要があります。

オンラインお弁当配送サービスでは、最低発送(注文)個数が決められてます1個から注文可能なところ、10個以上で対応など、事業者によって異なるので確認します。なお、1個から注文可能な事業者ならば、いきなり本番の研修で利用しなくても自分ひとりで試すことができるので、注文・配送のフローや見た目や味なども確認できるので安心です。

オンラインお弁当配送サービスの重要ポイントのひとつが「参加者の配送先住所収集」です。参加者が研修に参加する場所に確実にお弁当を配送できなくてはなりません。配送先の住所を収集し、事業者に伝える必要があります。その方法を事業者が準備してくれるパターンと研修主催者(こちら)で準備するパターンがあるので、しっかりと確認します。

研修主催者(こちら)で準備するパターンでは、参加者から配送先の住所を収集し、取りまとめたうえで事業者に送ります。この場合、参加者は研修主催者(こちら)に住所を知らせることになるので、「オンライン研修に申し込んだだけなのに住所を知らせるのは嫌だな。不思議だな」と思うかもしれません。また、取りまとめた住所を事業者に伝えるので、個人情報保護の観点でも注意が必要になります。しかしながら、情報の収集状況を研修主催者側で把握できるので小回りもききます。すでに参加者の住所が把握できている場合などは便利かもしれません。なお、配送先情報の収集にはGoogleFormsなども使えるでしょう。また、オンラインお弁当配送サービスによっては、飲み物など参加者ごとに選べるサービスもあるので、その場合には、あわせてそうした「し好」の情報も集めます。どういった情報が必要になるか、事業者に確認してからフォームを作るとよいでしょう。

事業者が準備してくれるパターンでは、事業者が情報を管理してくれるので、管理の手間が省けます。事業者により専用のフォームが作成されるので、研修主催者はそのフォームのURLなどを参加者に伝えるのみで済みます。一方で、参加者による入力忘れなどが懸念されます。事業者によっては「だれが入力済みなのか確認できる、未入力者の一覧表示」などの機能を提供しているところもありますが、そうしたサービスが未対応な事業者もあります。その場合、事業者が提供しているサービスとは別に未入力者を把握しなければならないので、逆に工数が増えそうです。このあたりの使いやすさを重要な選定基準に含めるべきかと思います。

また、こうした配送先収集が完了して、はじめて全体注文個数が決定します。入力漏れの参加者分は料金が発生しないサービスが多いようですが、支払金額の決定タイミングがいつになるのか、前もって確認しておきます。

配送まわり

  • 全国配送が可能か
  • 九州・北海道・沖縄など首都圏等から遠方の場合でも、同じものが届けられるか。前日配送が可能か
  • 九州・北海道・沖縄など首都圏等から遠方の場合でも、送料は同じか、送料込みか
  • 配送はチルドか冷凍かなど
  • 配送サービスを提供するのは、信頼のある事業者か

オンライン研修の場合、参加者は日本中、場合によっては世界中から参加します。現状では、日本国外をカバーするオンラインお弁当配送サービスはないようですが、日本全国をカバーするような事業者はあるようです。配送可能場所を最初に確認しておきます。

なお、全国発送可能な場合でも、九州・北海道・沖縄など首都圏等から遠方の対応は事業者によってかなり異なります。料金面で言えば、送料込みで全国一律の料金を徴収する事業者と、送料は別で配送先地域によって変化する事業者などがあります。配送先地域によって異なる場合でも、九州地方が遠方地域に含まれる事業者、北海道などのみが遠方地域になる事業者がなど、違いがあるので、注意します。

最終的には参加者の手元にお弁当が届いていなければなりません。多くの場合、オンラインお弁当配送サービス事業者自身が配送を手掛けるのではなく、宅配便のサービスを利用して配送されます。参加者が実際にお弁当を受け取るタッチポイントは宅配便事業者になるので、信頼のおける宅配サービスを利用しているかを確認しておきます。特にチルドなどの食品を扱うので、信頼・安心は重要ポイントです。

また、せっかくみんなで集まって食べるのですから、できるだけおいしく楽しいものを食べたいものです。お弁当配送サービスでは、チルドで届くもの、冷凍で届くものなどがあります。昨今は冷凍のものもおいしいとは思いますが、チルドのお弁当は魅力的です。一方で、参加者の受取環境もあるので、どちらがよいかは状況によって変わりそうではあります。

ランチに活用する場合の注意点

実は、今回、11時に開始するランチミーティングに利用しようとしたので、その点で検討すべきことがありました。これは、オンライン研修でランチに利用しようとする際と同じ問題です。「どうやっておいしいお弁当を11時までに参加者に届けるか」です。

多くのお弁当配送サービスの場合、配送時刻は宅配便事業者の時間指定に沿います。宅配便事業者の時間指定は、多くの場合、午前中の細かい時間設定はできません。「8時~12時」などのようになります。当日午前中の配送では間に合わないケースも出てきそうです。また、オンライン研修の場合、午前中の研修中に参加者のもとにお弁当が宅配便で届き、研修が中断してしまった、お弁当を受け取るために研修を抜けざるを得ないという本末転倒な事態を招きかねません。そのように考えると、研修前日の夜までに届いている必要があります。

ここで事業者によって差が出ました。

事業者1の例

配送可能先(参加者住所)すべてにおいて、チルドのお弁当を前日夜に届けることができる。消費期限は研修当日の夜になっているので、前日に配送されても問題はない。(お弁当配送サービスに研修当日を告知することで、研修当日の深夜を消費期限とするお弁当が注文できる。参加者が首都圏等から遠方の場合であっても、配送希望日を研修前日の夜などに設定できる)

事業者2の例

参加者が首都圏等から近い場合には、チルドのお弁当を前日夜に届けることができるが、遠方の参加者には対応ができない。(お弁当配送サービスに研修当日を告知することで、研修当日の深夜を消費期限とするお弁当が注文できる。参加者が首都圏等から近い場合は、配送希望日を研修前日の夜などに設定できるが、参加者が首都圏等から遠方の場合は、配送希望日を当日午前中しか選べない。前日までに届けることを目的にして、遠方からの参加者向けに研修当日の前日を告知して別契約でお弁当配送サービスに申し込んだ場合、チルドの商品の消費期限が研修前日になってしまうためチルド商品が選べません。そのため、別契約にした上で、冷凍で届く商品ラインから選ぶ必要があります。しかし、これでは「みんなで同じものを食べる」が実現できないので、不公平感が出たり、一体感を醸成しにくそうです……。そもそも研修主催者もひとつの研修で2つのお弁当配送サービスを契約するのは煩雑です。)

夕方以降に行う懇親会ならば問題がなさそうですが、ランチなど午前中に届く必要がある場合にはこのような事柄も確認しておく方がよいでしょう。

最後に参加者からの感想を……

  • PCと一緒にデスクに乗せやすい形状・大きさでよかった。いろいろとバラバラとしているより良かったと思う。飲み物が選べるのは嬉しかった。一口サイズで咀嚼音がしにくい食べ物だと安心だと思うし、今回ほとんどそんな内容だったので良かった。味もよかった。これくらい美味しいとやってよかった感がある。
  • 宅配の受取がうまくいくか、冷蔵庫に入るか、という点がちょっと心配だった。(中略・補足:宅配事業者から)事前連絡が来て、到着時間帯がわかったのでとても良かった。
  • 配達日がメールで届いたので安心できました。

というように、オンラインお弁当配送サービスならではの気配りが功を奏していたようです。

また、全体体験としても、

  • 自分で持ち寄ってもいいかなと思った。時間を区切ってお弁当タイムを確保してもらえるだけで、通常の研修とかなり異なる印象になるので、良さそうに思う。ただ、自分で全然用意しなくてもよかったのは確かに楽だった。
  • 同じものを食べることによる一体感。自分で選ばないことによるサプライズ感。
  • 初めてだったので、ワクワク感がありました。料理の話しはしなかったので(他の話しで盛り上がった)、その意味ではブラウンバッグ(持ち寄り)でも良かったかも
  • 食べながらのミーティングなのか、ミーティングの間に食べるのか、お作法(?)がよくわからなかった。お弁当はとても美味しくて驚いた。もしかすると、お弁当はいくつかから選べるようになっていると、同期型で同レベルの弁当を食べながらも弁当の中身の違いを話題にしながら話せるかもしれない。
  • お弁当手配という、ある意味非日常の世界を体験できるのは良いと思いました。あとはせっかくの料理について話す機会、きっかけなどあっても良いかも。
  • 配送したメニューをベースにして食事の摂り方といった研修もできそう、これだとオンラインであっても参加者どうし盛り上がりそうとも思いました。そういう研修、作ってみようかなぁ・・・

わざわざお弁当を準備しなくても……という気持ちもありつつ、そのワクワク感を楽しんでいただけたようです。また、ただお弁当を提供するのではなく、それに絡めて研修自体をデザインしたり(内容によるとは思いますが)、お弁当を中心に話題を提供したり、話が弾むような設計・ファシリテーションを組み込むとよさそうです。正直に言って「お安い」サービスではないので、しっかりと研修の中に組み込んでおくとその効果が発揮されそうです。

なお、今回、活用させていただいたのは、「1DISH foodbox」というサービスでした。

こんな感じで宅配便で届きました。

箱から出すと意外にコンパクトなので、家庭用の冷蔵庫に問題なく入りました。

とてもおいしかったです!

今回は、顔見知りの参加者とのランチミーティングだったのですが、みんなでお弁当を広げる前と後では、ミーティングの空気が変わるのを感じました。顔見知りの間柄でも、共通のものを食べ出したときの打ち解けた感じは、「ありてい」な意見を突き合わせて議論しなければならないランチミーティングを促進させたと思います。この効果は無視できないと改めて感じました。

研修デザインによって適切なサービスは変わってくると思います。しかし、検討すべき項目が洗い出されたのではないかと考えます。こうした引き出しを作っておいて、いざというときにしっかり活用していきたいものです。

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